Mac に Face ID が実装されない理由とは

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PC では指紋認証よりも顔認証の方が便利である

Mac の Touch ID (指紋認証) は非常に便利な機能です。しかしこと PC においては、Touch ID よりも優れた、他の生体認証機能が存在します。 そう、それは Face ID (顔認証) です

Face ID を実装してくれた方が、Mac は間違いなく一層便利になります。

なぜなら PC のモニタ (= Web / 内蔵カメラ) は、ユーザの顔との距離が基本的に常に一定であるため、iPhone で Face ID を使うときのようにわざわざカメラを顔の前に移動させるアクションをせずとも、自動的に認証が完了するからです。

事実、ボクが iPad Pro や Microsoft Surface で顔認証の Face ID (Window Hello) を使用すると、快適すぎて「全部これでええやん」と思ってしまいます。

それでも Apple は、Mac には頑なに Face ID を実装しようとしません。なぜでしょうか。

デスクトップ型 Mac が足を引っ張っている

Image: Apple

多分、「Mac mini」や「Mac Studio」のせいです。MacBook には当たり前についている内蔵カメラが、これらのどちらにも付いていませんよね。もっといえば、Mac Pro にも内蔵カメラがありません。

要するにデスクトップ型の Mac が足を引っ張っているのです。

Face ID はただの顔認証ではない

デスクトップ型の Mac に内蔵カメラがなくたって、「適当な Web カメラで Face ID を使えるようにしてくれたらいいじゃん」と思いますよね。

Windows では、Windows Hello 対応の Web カメラを用意することで、ラップトップ、デスクトップデバイス問わず顔認証を使用することができます。

しかし Mac にはこれができない理由があります。なぜなら Apple が、非常にセキュリティに厳しい会社だからです。

Face ID を実現しているテクノロジーが複雑なんだ

実は iPhone や iPad Pro に搭載されている Face ID は、フロント (内蔵) カメラだけを使って実現されているわけではありません。

フロントカメラおよび、その周辺部に実装された赤外線カメラ投光イルミネーター近接センサー環境光センサードットプロジェクターといった、複数のパーツの組み合わせで動作しているのです。Apple はこの Face ID を実現する技術について、「TrueDepth  カメラシステムと、顔の形状を正確に読み取る先進の技術」と称しています。

Image: Apple

要するに、「Face ID ではカメラ以外にも色々なセンサーで顔の形状を認識しているよ、だからセキュリティも万全だよ、大丈夫。Apple のテクノロジーだよ。」ということ。

一般的な Web カメラに、ここまで多様なセンサーは搭載されていません。ゆえに市販の Web カメラでは、Face ID をそもそも実行することができないのです。

ではなぜ、Windows Hello は一般的な Web カメラを使用することができるのでしょうか。

それは Windows Hello の動作条件が、「近距離赤外線センサーが搭載されていること」のみだからです。Face IDと比べると、敷居が非常に低いわけですね。

今後の実装も絶望的か

Image: Apple

「市販の Web カメラが使えないなら、Apple が純正で Face ID 対応の外付け WEB カメラとか、あるいは内蔵カメラ付きディスプレイを出せばいいじゃん」と思いますよね。

実は 2024 年現在、Apple が販売する純正ディスプレイ「Studio Display」には、内蔵カメラが実装されています。しかし Studio Display のカメラは当然のように Face ID に非対応です。20 万円もするのに。

今後 Apple が、より高性能なディスプレイを新たに発売する可能性はもちろんあります。

しかし「Vision Pro」の存在、「MacBook の薄型化計画」によって、そういった製品の登場はおろか、引き続き Face ID は Mac に搭載されないだろうと予想しています。

Vison Pro の存在による妨げ

Image: Apple

Appleが Vision Pro という先進的なデバイスを開発している現状を考えると、わざわざ Mac 用に高機能なディスプレイやカメラを新たに実装するとは考えづらいです。

その上 Vision Pro には第三の生体認証「Optic ID」が実装されています。

Optic ID は目の虹彩をスキャンしてユーザーを認識する技術で、これも一種の顔認証。Touch ID または Face ID に対応しているアプリは自動的に Optic ID にも対応するため、Mac と Vision Pro を組み合わせると、事実上 Mac にはすでに顔認証が実装されていると言えます。

ただし、Optic ID は虹彩認証に特化しているため、Vision Pro 無くして現在の Mac のディスプレイやカメラでの実現可能性はあまり高くありません。

Mac の薄型化計画による弊害

MacBook シリーズは今後、一層の薄型を目指しているともっぱらの噂です。一部のリーカーやジャーナリストによって、2025 年あるいは 2026 年に、より薄くデザインが刷新されるだろうと予想されています。

ここで現行モデルの MacBook Pro のディスプレイ面を見てみましょう。

Image: Apple

実際に測ってみると、現行の MacBook Pro ディスプレイ面の厚みは約 4 mm でした。対して Face ID 搭載端末史上最薄である iPad Pro (M4) の厚みは 5.1 mm。

数値上の違いは約 1 mm ですが、割合にすると約 20 % の差があります。現状でもすでに、MacBook Pro は相当に薄いことがわかりますね。

ただでさえ薄く、将来さらに薄くなるかもしれない筐体に、果たして Face ID を実現するだけのセンサー群を載せられるのでしょうか。ここで一つ動画を見てみましょう。

これは iPad Pro (M4) の分解動画です。Face ID を司るフロントカメラ周辺部は、iPad の厚みに対してそれなりにパンパンな印象があります。

ここから考えると、MacBook の薄いディスプレイ裏にこれらを実装する事は、なかなか難しそうに思えます。

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公式による Face ID 実装の否定

2021 年に当時の Apple ハードウェアエンジニアリング担当上級ヴァイスプレジデントだった John Ternus 氏、Mac および iPad 製品マーケティング担当副社長だった Tom Boger が、『ウォール・ストリート・ジャーナル』に、Mac に Face ID を実装しない理由を語りました。

その中で Ternus 氏は、「Mac は (キーボードによる) 間接的な操作に最適化されている。現在の構成を変える必要性を感じていない」と述べ、 また Boger 氏も「Touch ID は、すでに手がキーボード上に置かれているラップトップにおいて、便利な機能である」としています。

このことから少なくとも 2021 年時点では公式に、Mac に Face ID を搭載することに否定的だったことになります。

また Apple はその約一年後に、iPhoneをWebカメラ代わりに使用する「連携カメラ」機能を発表しました。この戦略からも、Face ID 専用のWebカメラをプロダクトとして出してくる可能性は低いと考えられます。

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