突然の通知
2026 年 4 月 28 日、エレコムから「重要なお知らせ (ナトリウムイオン電池を搭載した製品の航空機内への持ち込みに関する行政ルール更新のお知らせとお詫び) 」が公開されました。
内容は、同社のナトリウム イオン電池モバイル バッテリーが航空機内への持ち込み・預け入れともに不可になった、というもの。原因は、4 月 24 日付で国土交通省 航空局が更新した「機内への持込み又はお預け手荷物に制限がある品目の代表例 」に、ナトリウム イオン電池が新たに追加されたこと。

何を隠そう、私は同社のナトリウム イオン電池モバイル バッテリーを購入していまして。
パッケージには「世界初」の文字が誇らしげに並び、公式の製品ページにも「機内持ち込み対応」と書かれていた (当時) わけで。それがこの日を境に、状況が突如として一変してしまうことに。


「世界初」のナトリウム イオン電池モバイル バッテリー

私が購入したのは、「エレコム DE-C55L-9000BK」。ナトリウム イオン電池を搭載した、いわゆる「世界初」を謳うモバイル バッテリーです。
主なスペックは以下のとおり。
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 電池種類 | 充電式ナトリウム イオン電池 |
| 電池定格容量 | 3.0 V/3000 mAh × 3 (計 9000 mAh) |
| 出力 | USB Type-C (最大 45 W) + USB-A |
| くり返し使用回数 | 5000 回 (毎日使って約 13 年) |
| 使用温度範囲 | 放電時: −35℃〜50℃ |
| 重量 | 約 350 g |
| サイズ | 約 W 87 × D 31 × H 106 mm |
セールス ポイントは明確です。リチウム イオン電池に比べて発火リスクが低いこと。2025 年はモバイル バッテリーの発火事故が相次いだことは記憶に新しいでしょう。その対策としてもってこいだったのです。
その上で −35℃ の極寒環境でも動作したり、5000 サイクルという圧倒的な長寿命を兼ね備えていたり、実用性も必要十分。「安全で長く使える次世代バッテリー」という触れ込みに、素直に魅力を感じて購入したのが、私。
外観とポートまわり

製品としての作りは悪くありません。マット ブラックの筐体に ELECOM のロゴが控えめに入って、デザインはむしろ良好。
一方で手に取ると 350 g のずっしりとした重量感があります。9,000 mAh クラスのモバイル バッテリーとしては重く、またサイズも大きいのがネック。



ポートは USB Type-C と USB-A の 2 口。USB-C は入出力兼用で、最大 45 W 出力に対応します。MacBook Air 程度のノート PC への給電もこなせるスペックですね。

何が起きたのか — 国土交通省のルール変更
2026 年 4 月 24 日、国土交通省 航空局は「機内への持込み又はお預け手荷物に制限がある品目の代表例 」を更新しました。この更新で、新たに以下の 1 行が加わりました。
ナトリウムイオン電池(ナトリウムイオン電池を内蔵したモバイルバッテリー含む) 持込み:× お預け:×
リチウム イオン電池のモバイル バッテリーであれば、100 Wh 以下なら機内持ち込みが可能 (預け入れは不可)。しかしナトリウム イオン電池は、容量にかかわらず一律で持ち込みも預け入れも禁止。つまり、飛行機に乗るときにはどうやっても持っていけないということになりました。
変更前後を整理するとこうなります。
| 変更前 | 変更後 | |
|---|---|---|
| 機内持ち込み | ○ 可 | × 不可 |
| お預け手荷物 | (記載なし) | × 不可 |
エレコム側も「パッケージや弊社 Web サイト等におきまして『機内持ち込み対応』等と表記していましたが」と認めたうえで、順次表記を修正するとしています。なお、「日常生活における通常のご使用において安全性に問題はございません」とも付け加えていますね。
そもそもなぜナトリウム イオン電池の機内持ち込みが突然禁止されたのか?
リチウム イオン電池よりも安全だって触れ込みのはずなのに、ナトリウム イオン電池のみが規制の対象になった理由はなぜでしょうか。
ここで衝撃の事実が発覚します。『ITmedia NEWS』に、以下の内容が記載されたのです。
国土交通省航空局に理由を聞いたところ、意外な答が返ってきた。「ナトリウムイオン電池については、24日のアップデートで(文書に)明記したものの、もともと持ち込み不可だった。取り扱いが変わったわけではない」という。「そもそもICAOにナトリウムイオン電池に対応した基準が存在せず、国際基準でも持ち込み不可になっている」。
ナトリウムイオン電池は飛行機へ持ち込み不可に、とエレコム公表も国土交通省は「以前からダメだった」 – ITmedia NEWS https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2604/28/news098.html
ICAO とは国際民間航空機関のことで、国際線の安全基準や航空ルールの土台をつくる国連の専門機関のような存在。状況をまとめると、「最先端すぎる技術で前例がないのでとりあえず NG な」っていうことのようです。
つまり、先ほど提示した表は誤りで、正しくはこう。
| 変更前 | 変更後 | |
|---|---|---|
| 機内持ち込み | × 不可 | |
| お預け手荷物 | (記載なし) × 不可 | × 不可 |
しかし、ですよ。だとしたら当初「機内持ち込み OK」としていたエレコムは、どういう意図でそう嘘をついていたのでしょうか。人の命が関わる製品および情報であるにも関わらず、エレコムは詳細な調査を行うことなく、消費者を騙し続けていたということになりますね。
正直な気持ち — 使い道が消えたしエレコムへの信頼が地に落ちた
ここからは個人の率直な感想です。
モバイル バッテリーを普段使いする人がどれだけいるのでしょうか。少なくとも私の場合、モバイル バッテリーの出番は「飛行機に乗って移動するような、長距離の外出・遠征先」くらいです。日常生活で使う機会はほとんどありません。自宅でもオフィスでもコンセントがあるし、近場の外出ならスマートフォン本体のバッテリーで十分足りますからね。
つまり、機内に持ち込めないモバイル バッテリーは、私にとって使い道が皆無。
エレコムは「日常生活における通常のご使用において安全性に問題はございません。引き続き安心してお使いいただけます」と言っていますよ。それは理解可能。ナトリウム イオン電池自体が危険だというわけではないのでしょうから。しかしそもそも日常生活では使わないのですよ。購入時の価格は約 6,500 円。これが丸ごと無駄になってしまいました。

「機内持ち込み対応」と打ち出して販売していた以上、消費者が「飛行機に持っていける」ことを前提に購入したのは当然のことです。蓋を開けてみれば、それは嘘だったわけで、でもその上で事実を隠そうとするリリースを掲載するエレコムの企業体質に失望しました。せめてそこは誠実であれよ。
率直に言って、納得できるわけがありません。私は日本の老舗企業としてエレコム製品を信頼してよく購入していましたが、もう二度と買うことはないでしょう。
これから購入を検討する人へ
ナトリウム イオン電池の技術そのものは興味深いものがあります。発火リスクの低さ、極端な温度環境への対応力、5000 回という長寿命、材料調達の面での優位性、いずれもリチウム イオン電池にはない強みです。
ただしナトリウム イオン電池は航空機への持ち込み・預け入れが一切できないことはこれまで述べてきたとおり。この事実は、用途を大きく制限します。アウトドアや防災用途など「飛行機を使わない場面」に限定して使うのであれば選択肢にはなりますが、旅行や出張のお供として考えているなら、現時点では選ぶべきではないでしょう。
購入を検討している方は、自分の使い方を振り返ったうえで判断してください。
近年ではリチウム イオン電池の中でも、「半固体バッテリー」と呼ばれる、安全性を高めた新技術が搭載された製品も数多く出回っていますから、そちらの方が無難な可能性は大いにあります。
半固体モバイル バッテリーの例


