MacBook のバッテリー寿命については、さまざまな議論が世の中に蔓延っています。
やれ「充電器は繋ぎっぱなしの方がいい」だの、やれ「ある程度充電したら充電器から抜いた方がいい」だのといった具合にです。
どちらが正しいのか、気になりますよね。ですから実際に 3 年間かけて、検証してみました。
今日、この場所で、私がそのような不毛な議論に終止符を打ちましょう。
繋ぎっぱなし VS 適時充電

今回検証に使用したのは、以下の 2 つの MacBook です。どちらも設定で「バッテリー充電の最適化」を有効にしており、サードパーティ製バッテリー管理アプリは導入していません。
- 繋ぎっぱなし運用: 16 インチ MacBook Pro (M1 Pro)
- 2022 年 10 月 新品で購入
- プライベート用端末 (YouTube などのエンタメ、写真編集、動画編集など)
- 適時充電運用: 14 インチ MacBook Pro (M1 Pro)
- 2022 年 4 月 新品で購入
- 仕事用端末 (資料作成、画像編集、動画編集など)
繋ぎっぱなしの検証結果

今でも私のプライベートメインマシンとして、毎日大活躍している 16 インチ MacBook Pro (M1 Pro)。
持ち出すのは年に 2 回の帰省時くらいで、それ以外のほとんどの時間を充電器に繋ぎっぱなしにして運用してきました。
購入からちょうど 3 年が経過した、2025 年 10 月現在、そのバッテリー状況がこちらです。

- 充電回数: 61 回
- 最大容量: 98 %
なんと 3 年間、毎日のように使用しているにも関わらず、2 % しかバッテリーが劣化していません。この数値が意味するところは、ほとんど新品のままあると言うことに他なりません。
適時充電の検証結果

対して 2022 年 4 月から導入している 14 インチ MacBook Pro (M1 Pro) (写真右)。こちらはお仕事用のメインマシンです。
先ほどの 16 インチ MacBook Pro とは異なり、持ち運びの機会が多く、充電とバッテリー駆動 (放電) を繰り返してきました。
購入から約 3.5 年が経過した、2025 年 10 月現在、そのバッテリー状況がこちらです。

- 充電回数: 259 回
- 最大容量: 84 %
先の 16 インチ MacBook と比べて導入が半年間早いというハンデを差し引いても、圧倒的にバッテリーが劣化しています。
結論: 繋ぎっぱなしにした方がバッテリー寿命は長持ちする

これほどまでに単純明快な結果ですから、皆さんももうお分かりでしょう。
バッテリーを長持ちさせたい場合は、充電器に繋ぎっぱなしにするべきです。
そもそもリチウムイオンバッテリーの劣化条件とは

正直なところ、そもそもこの議論は検証するまでもなく、最初からこの結論に帰着することが分かりきっていました。なぜならば、リチウムイオンバッテリーが劣化する条件は決まっているからです。
では、リチウムイオンバッテリーの劣化条件とはなんなのでしょうか。そのほとんどが、「使い方」にあります。特に次の 4 つは、劣化を早める代表的な条件です。
1. 満充電
バッテリーを 100 % の状態で長時間放置すると、内部に負担がかかります。リチウムイオン電池は「高い電圧のまま維持されること」がストレスになるため、一般的には 80 〜 90 % あたりで止めるのが理想的とされています。
2. 過充電
かつてのニッカド電池などと異なり、リチウムイオンバッテリーは過充電が厳禁です。規格以上の電圧をかけ続けると発熱や化学反応の劣化が進みます。
3. 過放電
バッテリーを 0 % に近い状態まで使い切ってしまうことも劣化の原因となります。セル内部で不可逆的な化学変化が進み、容量の回復ができなくなる恐れがあるためです。
4. 充電回数
リチウムイオンバッテリーは「充放電サイクル (= 充電回数)」に寿命が規定されています。この際、100 % → 0 % への放電を 1 回とカウント。50% → 0 % の放電を 2 度行うことも同様に 1 回とカウントします。
Mac は電源に繋ぎっぱなしでも、自動的に劣化条件を防いでくれる

さて、満充電や過充電がまずい行為であるならば、Mac を充電器に繋ぎ続けることはよろしくないことなのでは? と疑問に思われるかもしれません。
しかし、実際の結果は冒頭の検証にある通り、繋ぎっぱなしの方が有利に働いていました。
これには、Mac が自動的に満充電・過充電を避けるようなシステムがソフトウェア、ハードウェアの両面から組み込まれていることが影響しています。
バッテリーの駆動時間と耐用年数を最大限に延ばす | Apple
https://www.apple.com/jp/batteries/maximizing-performance/
Apple製デバイスには、バッテリーの老化を抑えられるよう、充電のパターンとバッテリーの温度を管理するためのソフトウェアとハードウェアシステムが組み込まれています。(中略) 毎日の充電傾向にもとづき、所定の条件下で、バッテリーを使う必要がある直前までフル充電するのを自動的に遅らせます。
「バッテリーを使う必要がある直前までフル充電するのを自動的に遅らせる」状態がどういうものなのか。一言で表すと、Mac がバッテリーを 80 % までしか充電しなくなります。

充電 80 % の状態は、先の満充電を説明する際に記載していた、リチウムイオンバッテリーの充電状態の理想値であり、バッテリーへのダメージが防がれるという仕組みになっているというわけ。
また、80 % で充電が止まるということは、過充電も同時に防いでくれている状況です。
充電が止まっている間、Mac はバッテリーではなく充電器から供給される電源で駆動しますから、バッテリーを消費しません。つまり充電回数の消費も抑えられるわけ。当然、過放電の心配も全く必要なし。
よって、充電器に差しっぱなしにしておくことこそが、Mac のバッテリーにとって、最も良い環境であるということになるのです。
MagSafe で充電し続けるのは、避けた方がいいかもしれない

バッテリーの寿命を最大化するためには、MacBook は充電しっぱなしにするべきことはこれまでに述べてきた通りです。
一方で、MagSafe で充電し続けるべきではないかもしれないという点を補足しておきます。
私はこの検証において、充電に付属の純正の AC アダプタと、付属の純正の MagSafe ケーブルを用いました。
初めの数年は問題ありませんでしたが、ここ 1 年ほど、接続が断続的になる不具合に見舞われています。ケーブルにも AC アダプタにも触れていないのに、突然 MagSafe の通電ランプが点滅を繰り返し、macOS 上のインジケーターも充電とバッテリー駆動のアイコンが行き来します。
さらにこの現象が、16 インチ、14 インチ、どちらの MacBook Pro でも同様に発現していて、再現性があるということが重要です。
おそらくですが、MagSafe はマグネット方式ゆえに、接点の摩耗や消耗が起きやすいのでしょう。そのため USB-C で充電できる場面では、USB-C の使用を優先するべきかもしれません。
まとめ: バッテリーのためには充電ケーブルには差しっぱなしにするべき、だが……
以上のことから、もし MacBook のリチウムイオンバッテリーへのダメージを最小限に抑えたい場合、充電器は差しっぱなしにするべきです。
しかしながら、MacBook 本来のメリットは、いつでもどこでも、場所や時間を気にせずに Mac を使えることにあります。
私の環境では、3 年間以上特にバッテリーのことを気にせずに運用してきた 14 インチ MacBook Pro でさえ、残量は 80 % 以上あります。
結局のところ M1 以降の Apple Silicon 搭載の MacBook は省電力性能が著しく高いので、バッテリーの劣化を気にすることなく、思いのままに使った方が、結果として QOL は高まることと思います。
MacBook の充電に関する Q&A
寝る前も充電器を繋ぎっぱなしで大丈夫?
問題ありません。Mac には「バッテリー充電の最適化」機能があり、長時間の接続中も過充電を防ぐよう自動制御されています。むしろ夜間に充電を外す・差すを繰り返す方が、結果的に充放電回数が増えて劣化を早める可能性があります。
充電しながら動画編集や高負荷作業をしても平気?
基本的には問題ありません。電力が直接アダプタから供給されるため、バッテリーは消費されません。ただし高温環境下では内部温度が上がりやすく、バッテリーの化学劣化を促す要因になるため、換気の良い場所での作業をおすすめします。
MagSafeで繋ぎっぱなしにするのは避けた方がいい?
長期的に挿しっぱなしにしていると、マグネット式の特性上、接点の摩耗やズレによる断続的な接触不良が起こることがあります。安定運用を重視するなら、据え置き時は USB-C ケーブルを利用するのが安心です。
Windows のラップトップでも繋ぎっぱなしでいいの?
メーカーによって制御方式が異なります。Surface や ThinkPad などの一部機種は「充電上限 80 %」などを設定できる専用ソフトがあり、それを使えば同様に差しっぱなし運用が可能です。一方で古いラップトップでは過充電防止機構が不十分な場合もあるため、事前に仕様確認をおすすめします。