今回レビューするのは、マルマン「ニーモシネ 特殊無地 <A4> 」。
ニーモシネは、日本のノート (物理) 老舗メーカーであるマルマン社から出ている、高級ノート。
ニーモさんに対して殺意が芽生えているわけではありません。そういう製品名なんです。
「このデジタルの時代にわざわざ物理ノートを買うなんて、とち狂ったか!?」と思われるかもしれませんが、これが案外良かったのでご紹介します。
ニーモシネのレビュー
映えるモダンな黒


表紙は完全なる黒。プラスチック製で、強度もあります。

ワンポイントのロゴが効いたモダンなデザインが効いています。デスクに置いていると気持ちが昂っちゃう。


元々はニーモシネではなく、レポートパッドとそのレザーケースを買うつもりで伊東屋を訪れていました。
でもこの見た目をご覧いただければ、私がニーモシネを購入した理由の一片を感じ取っていただけるかと。伊東屋の商品棚で輝いていたんです。

横向きで使える

一般的なノートは縦使いですが、ニーモシネ 特殊無地 <A4>はなんと横使い。
普段 A4 や A3 用紙の裏紙を使って手書きメモを取っていた私には、紙を横に使う癖があります。ニーモシネは私のこの癖に、ドンピシャで刺さりました。

A4 無地、広がる自由

講義ノートを取りたいわけではないので、罫線や方眼は不要。それよりも思考を邪魔されない空間の広さが欲しい。
ニーモシネは A4 無地、そして先に述べた横使いができる点で、非常に優秀です。


厚手の紙質


マルマンらしく、書き味は申し分ありません。何せ子供の頃から、ルーズリーフはマルマン一択の愛用者ですから、その品質の高さはよく理解しています。
特にニーモシネは、厚手で密度も高いのが特徴です。筆圧の弱い私が普段愛用している「ぺんてるサインペン」であっても、ほとんど裏写りしません。
これだけタフな紙質ですから、万年筆で書くとさぞ気持ちがいいでしょうね。最近ご無沙汰でしたが、久しぶりに取り出そうか悩み中です。
強気な価格設定のように見えて、ネットで買えば良心的か
伊東屋では姑息なことに、値札が貼られていませんでしてね。特に気にせずにレジに持って行くと、1,320 円。後日調べるとこれが定価のよう。
当時はそんなもんかと思って支払いましたが、冷静に考えるといい値段ですよね。
ニーモシネ 特殊無地 <A4> の紙の枚数は 70 枚、紙一枚あたり約 19 円の計算になります。
比較として、おそらくみなさん馴染みのあるコクヨのキャンパスノートが、30 枚 で 242 円です。つまり紙一枚あたり約 8 円。
サイズも紙質も違うので単純比較はできないとはいえ、「書く」という用途に対してニーモシネ 特殊無地 <A4>は、やはり高価ではありますね。
ちなみにキャンパスノートは A4 サイズも展開されていて、30 枚 340 円。40 枚 460 円。70 枚合計で価格は 800 円と、なおニーモシネ 特殊無地 <A4> の定価よりも 520 円安価となります。
ただし、記事執筆時点で Amazon からだとニーモシネ 特殊無地 <A4> が 882 円で買えるようです。この金額なら A4 キャンパスノートと比べても価格差はわずかに 82 円。品質を考えるとかなりお得だといえます。
なぜこの時代に紙のノート? 手書きの価値を再認識
思考の整理には「手書き」が有効

今回私は、ニーモシネ 特殊無地 <A4>を何の目的で購入したのでしょうか。
タイピングが平均よりも速い私は、タスクリストの作成や会議中のメモは全て Mac で行っています。
それは紙のノート、ニーモシネを購入した今でも変わっていません。その方が効率的だし、会話内容の書き起こしが間に合うので、事実捉えを間違いようがない点でも確実ですから。
にもかかわらず、購入した理由。それは、思考の整理のためです。
私は文字が好きなので、最終的には全ての情報をテキストとしてまとめることこそが、情報を正確に残すうえで最も有効だと考えている、非現代的な思考の持ち主です。
けれども情報を精緻化してテキストにするためには、その情報を構造的に整理し、理解しておく必要があります。
様々な技術的検証を行ったり、思考を巡らせる際、タイピングの文字情報で考えまとめるには限界があることに、最近ようやく気がつきまして。
その際、裏紙を使って手書きで図解や関係性を示すことを試してみたわけです。するとまあ整理や理解が捗ること捗ること。
だから裏紙ではなく、正式に私の考えをまとめるためのノートとして、今回はニーモシネ 特殊無地 <A4>を手にしてみた次第です。
iPad があるのに、なぜ紙? 紙特有の速さと気軽さ

私は 12.9 インチの iPad Pro を所有しています。当然 Apple Pencil も持っているし、過去にはノートとして使用していた時期もありました。
けれども、神経質な私には、Apple Pencil を活用する iPad のスタイルは合わなかったのです。
一番気に入らないのは、画面に手油や指紋がついてしまうこと。気になりすぎて、ノートテイクしている時よりも、画面を拭いている時間のほうが長いのではないかというくらいです。
また、ノートを取るまでのタイムラグが鬱陶しい。
- iPad のスリープを解除する。
- ノートアプリを起動する。
- ノートを保存するフォルダを選択または作成する。
- ファイル名をつける。
- ノートを開く。
これらの儀式を終えて、ようやく私のノートテイクが始まります。
これも客観的に見ればフォルダリングオタクの神経質さが災いしているように思いますが、いずれにせよ、私にとって iPad で Apple Pencil を使うのは面倒臭い行為なのです。
その点で、紙のノートは素晴らしい。ノートを手に取り、開き、ペンの蓋を取り外せば準備万端ですからね。
ただし紙のノートには、デジタル上でフォルダリングできないという欠点があります。
それでも今の時代は、iPhone で写真を撮るだけで、まるでスキャナーにかけたかのようにデジタル化でき、そのデータを AirDrop で Mac に送れば、簡単にフォルダリングができてしまいます。
これはこれで手間ですが、手間が後に来るか、先に来るかの違いに過ぎません。
ノートを取りたいと思う時なんて、総じて速効性が求められる場面に違いありませんから、後に手間がかかる物理ノートの方が私にとっては優秀なのです。

本当は電子ノートにも興味があった

実はニーモシネを購入する以前、電子ノートも選択肢として考えていた時期がありました。
最近、万年筆で有名なあのモンブランからも電子ノートが登場し、しかもそれが Wacom と共同開発といいますから、一層物欲を刺激されてしまいまして。
でも、電子ノートは価格が馬鹿げています。例えばモンブランのそれは、約 13 万円もします。ブランド料がコミコミだからだと思いますよね。日本製の電子ノート「Supernote」は約 8 万円です。どちらにしたって高いのです。
もちろん安いものは数千円からでも買えますが、一番重要なのは快適に手書きができることであり、安い電子ノートではその条件を達成できない恐れが大いにあります。
というわけで、電子ノートの選択肢は雲散霧消し、ニーモシネに行き着いた次第でした。
まとめ
ニーモシネを使い始めてから、久しぶりに手書きの時間が楽しくなりました。
ここ数年にわたってデジタル一辺倒だった私が、紙に戻って感じたのは「記録」ではなく「思考」を書いている感覚です。元々その目的で用意したから当たり前なのですけれど。
キーボードで打つと、どうしても思考のスピードに合わせて文字が流れていきます。対してペンを握り、紙の上で線を引くと、言葉を選びながら、一つひとつを噛みしめるように考えることができます。
実際、タイピングと手書きでは脳の使い方が異なることが、複数の神経科学研究で示されていることから、私の感覚もあながち間違いではないのでしょう。
もちろん、定価だけを見ればニーモシネは高いです。でもそれは、ニーモシネを「書くための道具」として捉えるから。そうではなく、「考えるための道具」だと思うと、また違った感覚になります。
ネットで買えば、価格も妥当なものになりますから、ぜひ一度お試しを。
