円安・インフレ進行下における買い物の極意 – 勢いと冷静さが必要

32 年ぶりに 1 ドル 151 円台まで進んだ円安。さらにウクライナ戦争によるインフレが重なり、私たちの懐事情はどんどん悪化しています。

そして、この傾向は弱まることなく、むしろ強くなる一方だというのが一般的な見解です。

この未曾有の事態において、私たちは買い物をする上でどのような心構えが必要なのでしょうか。

円安・インフレ進行下における買い物の極意をお伝えします。

目次

そもそも円安って?

日本銀行の Web ページでは、「円安」は以下のように定義されています。

円安とは、円の他通貨に対する相対的価値(円1単位で交換できる他通貨の単位数)が相対的に少ない状態のことです。

https://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/intl/g18.htm/

冒頭で触れた「1 ドル 151 円」を例に考えてみましょう。これは表記の通り、1 ドルの価値が 151 円であることを示しています。151 円を払って 1 ドルを買うことができるというわけ。

このとき、「999 ドル」の「MacBook Air」を日本円で購入するためには、(製品のドルの価格) * (ドル円) = 999 ドル * 151 円 = 150,849 円 が必要だとわかります。

円安が進めば進むほど円の価値が下がり、(ドル円) の項の値、すなわち (製品のドルの価格) に対する係数が大きくなってしまって、結果として外国メーカー品を買うために必要なお金はどんどん増えてしまうわけです。

反対に「円高」になれば円の価値が高いということですから、海外メーカー品を買うために必要なお金は少なくて済みます。

同じく 「999 ドル」の「MacBook Air」を、「1 ドル 76 円 (2011 年に実際にあった数値)」としてもう一度計算すると、(製品のドルの価格) * (ドル円) = 999 ドル * 76 円 = 75,924 円 で買えてしまうわけです。

こうして例を挙げて考えてみると、いかに円安のインパクトが強いものなのかがよくわかりますね。

そもそもインフレって?

次にインフレについて考えてみましょう。

SMBC 日興証券は、インフレについて以下のように定義しています。

インフレとはインフレーション(Inflation)の略で、私たちが普段買っている日用品やサービスの値段(物価)が上がることをいいます。

https://www.smbcnikko.co.jp/terms/japan/i/J0111.html

一口に「インフレ」と言っても、その状況に合わせて「良いインフレ」と「悪いインフレ」の 2 通りに区分されます。

まずは前者の「良いインフレ」を見てみましょう。

良いインフレの下では、企業が販売価格の上昇で儲かり、社員の給料が増え、消費者は物価上昇による生活費の増加を給料アップで吸収してもっと商品を買うようになり、商品がたくさん売れて企業が儲かる…というサイクルで景気は良くなります。

https://www.smbcnikko.co.jp/terms/japan/i/J0111.html

要するに物価の上昇とともに、私たちの収入も上昇。どんどん景気が上向いていくのが良いインフレということですね。

ではその逆に「悪いインフレ」はどんなものでしょうか。

商品の仕入れ価格の上昇ほど商品価格に上乗せできず、企業の業績が悪くなり、賃金が上がらないのに身の回りの商品が値上がりして家計を圧迫する、といった悪循環をもたらすのが悪いインフレです。

https://www.smbcnikko.co.jp/terms/japan/i/J0111.html

物価だけ上がっていくのに、私たちの収入は低いまま。どんどん景気が苦しくなっていくのが悪いインフレ。いわゆる「スタグフレーション」というものになります。

では、今の日本は良いインフレ、悪いインフレどちらに該当するでしょうか? いうまでもなく、後者ですよね。

なぜ円安とインフレが進んでいるの?

どちらも事の発端は 2019 年に感染拡大した COVID-19 の世界的流行、そして 2022 年に発生したロシア・ウクライナ戦争です。

インフレの原因を辿ってみましょう

コロナ禍を経て、世界が「with コロナ」に向けて経済活動を再開した結果さまざまな物資の需要が増えたものの、需要に対して供給が追いつかず物価が上昇。「ゼロコロナ」を目指した中国が上海市などを封鎖し、半導体や工業製品の供給が滞ったことも物価高を招きました。

ロシア・ウクライナ戦争によって、世界の原油の 12 % を生産していたロシアへの経済制裁が発動。この影響で原油の供給が減少。その結果原油価格が高騰し、物流費や包装費などが上昇しました。また、ロシアとウクライナで世界の輸出量大半を占めた小麦やトウモロコシの供給も滞ったことで、パンやパスタなどの食料品はもちろん、家畜の餌も高騰して食肉なども価格が上昇しました。

これらの影響は世界に共通していて、ですからアメリカをはじめ多くの国々が記録的なインフレに陥っています。

そんな中、円安が進んでいる日本では一層輸入時にお金が必要になるわけで、これらが日本のインフレの原因の一部といういわけ。

円安の原因も辿ってみましょう

前述の通りアメリカは未曾有のインフレ状況です。インフレは景気の向上を伴うことが多いものの、過剰なインフレは消費者の消費意欲が失われ、次第に景気は低迷してしまいます。

景気が低迷する前に、「物価はそこそこ・消費もそこそこ」なバランスの物価安定を目指すために金融政策を行います。

この金融政策が昨今ニュースでよく耳にする「金融引き締め」、すなわち「金利の上昇」です。

アメリカは急激なインフレに対応するため、それに比例して金利を上昇させています。

一方の日本は世界各国の例に漏れずインフレが始まっているものの、収入上昇を伴わない悪いインフレ状況に突入しています。

この状況で金利を上げようものなら企業も個人も壊滅してしまうため、日本は低い金利を維持せざるを得ません。

一般に金利が高い通貨が買われる傾向があり、金利がどんどん上がるドルがたくさん買われドルの価値が向上。一方で円は金利が低いままなので買われず、売られ、どんどん価値が下がってしまう。

こうした日米の金融政策の違いがこそが円安の原因なのです。

円安・インフレ進行下における買い物の極意

円安はアメリカの金融引き締めが落ち着くまで続くことは自明です。

アメリカが既に景気後退を始めたことを示唆する情報はいくつかありますが、今の円安が落ち着くまでには相当の時間を要することが予想されます。

つまりインフレや円安はこれからもしばらく継続、もしくはさらに過酷なものになるということです。

The Wall Street Journal – Microsoft and Gopuff Are Latest Tech Firms to Cut Jobs
https://www.wsj.com/articles/microsoft-and-gopuff-join-a-string-of-tech-companies-cutting-jobs-11657653758

Bloomberg – Forecast for US Recession Within Year Hits 100% in Blow to Biden
https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-10-17/forecast-for-us-recession-within-year-hits-100-in-blow-to-biden#xj4y7vzkg

「欲しい海外メーカー品は今すぐ買う。明日はもっと高くなる」

あなたがもし、以前からずっと購入を悩んでいた製品があるなら、それは迷わず今すぐに買うべきです。

円安が進行すればするほど輸入に必要な日本円が増えることは先に述べた通りです。

これは海外メーカー品はこれからしばらくの間、どんどん値上げされていくことが約束されているということを示しています。例えばルイ・ヴィトンのようなハイブランド品、Apple や Microsoft の PC やスマートフォンはモロにその対象です。

日本製品であっても、原料が海外から仕入れるものであれば関係なく値上げされる可能性が高いです。カリモクのような木製家具メーカー、Panasonic のような家電メーカーなどがわかりやすい例でしょう。

値上げのスピードは (インフレによる物価上昇) * (円安) の乗算で進みますから、油断しているとあっという間に信じられないほど価格が上昇する可能性があります。

一例として Apple の iPad を上げてみます。

iPad Pro 12.9 インチ の 2 TB モデルを買おうとした場合、物価や円相場が落ち着いていた昨年は 261,800 円で購入することができていました。

ところが今、同じモデルを買おうとすると 348,800 円 が必要になります。同じものを買うだけなのに、時期を逃すと 8 万円も余計に支払う必要が出てきてしまうのです。

業界に精通していればある程度価格改定が実施されるタイミングは予測できるかもしれません。でも、ほとんどの場合はそうではないでしょう。

だからこそ、あなたにとって適正な価格、あるいはちょっと背伸びをした価格でいるうちに、あなたが必要とするその製品を買うべきなのです。

「その買い物は本当に必要か?」財布の紐は極力固く

ただ、何でもかんでも買っていいわけでは当然ありません。欲しいものを全て買ってしまっては、お金がいくらあっても足りませんから。

これ以降もインフレや円安が進むとすれば、当然今よりもさらに食事や日用品にかかる費用も高騰します。だからこそ、出費は最小限に抑え、今後来たる生活苦に備える必要があります。

あなたにとって本当に必要なものはいますぐ買うべきですが、本当に必要なものでない場合は当然ですが買うべきではありません。むしろこれまで以上に物欲は我慢すべきです。

真に必要なものはいつもより勢いよく、そうでないものはより冷静な気持ちで買い物に向き合うのが、円安・インフレ進行下における買い物の極意。

この考えに基づいて、ボクは 16 インチ MacBook Pro を購入しました。

さあ、あなたは何を買いますか?

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