モノは試し。
Apple の新製品「AirTag」。3,800 円 / 個と、Apple 製品にしては手を出しやすいお値段なこの子は、いわゆる「紛失防止タグ」と呼ばれるカテゴリに属する代物です。
AirTag の発売が噂段階だった頃、「AirTag なんて買う暇があるなら自分の荷物くらい自分で管理した方がよっぽど得」と強気にまとめた記事を書いたことがあります。
正直 AirTag を買う気は一切なかったんですが、かつて不要と考えていた Apple Watch をいざ入手してみると想像を絶する有用さに驚いた経験が直近であったので、お試しでひとつ買ってみることにしました。
せっかくならば発売日に欲しいよね。ということで予約開始当日、初めて Apple Store に張り付きました。そして予約受付が始まった瞬間に購入しました。F5 連打 (正確には Mac なので、command + R 連打) したのなんて最早いつぶりか分かりません。
AirTag の実物は小さいけれど、でかい
というわけで 2021 年 4 月 30 日、無事に Apple から届いたので早速開封。購入したのは本体と、純正レザーケースを一つずつ。ケース、本当は黒色が欲しかったんですが、注文時点ではカラーバリエーションが限られていたので、仕方なくバルティックブルーを購入しました。
まずは Air Tag 本体から見ていきましょう。直径サイズ的には 500 円玉と同じくらい。100 円と比べると明らかに大きいですね。
厚みは結構ありますね。一般的な二つ折り財布の小銭入れにはサイズオーバー。型崩れが起こってしまうと思います。
ケースに AirTag を入れてみました。本体が片面だけ見えるのかなと思っていたら、両面見えるみたいです。各所の先行レビューで「AirTag はすり傷がつきやすい」と言われていますから、このケースでは間違いなく傷だらけになることでしょう。
傷をつけず使いたい方はフィルムの購入が必須な感じがします。ボクは気にしないので、裸で使ってみようと思います。
ちなみに初期設定についても本記事で解説しようと思いましたが、あまりに簡単すぎたので割愛 (iPhone で 3 回くらいタッチすれば終わり)。
AirTag を鍵につけてみた
地味ながら大変な作業でした。
「AirTag レザーキーリング」はダブルリング (二重カン・ニコイル) 仕様のキーホルダーです。この形状のキーホルダー初見のボクは、マジでつけ方がわからなかったので備忘録として。
まずはミニマイナスドライバーを外側の隙間にねじ込みましょう。ミニマイナスドライバーは 100 円ショップでも入手可能です。
続いてマイナスドライバーで作った隙間に鍵をねじ込みましょう。ある程度奥までねじ込んだら、マイナスドライバーは外して OK です。
あとは一番最後まで鍵をねじ込んでいくだけ。……外すときどうしよう。
どうでもいい余談ですが、ボクの推しキャラの月川ちりしゃんのキーホルダーはここで引退です。今までお勤めご苦労様でした。ありがとう、ちりしゃん。
AirTag でできること
ここからは AirTag の機能紹介。大雑把にまとめると次の 3 つです。
- iPhone、iPad、Mac で使用できる「探す」アプリを使用して、AirTag をつけたアイテムの位置を大雑把に把握できる
- iPhone 11 以降の機種で、センチメートル単位の正確な位置把握ができる
- 「紛失モード」に設定すれば、AirTag をつけたアイテムを見つけた他人から電話で知らせてもらえる可能性がある
「探す」アプリで位置を把握する
これはとても驚いたんですが、なんと AirTag には GPS が搭載されていません。それでは一体どうやって紛失物の位置を特定するのかというと、世の中に蔓延る他人の iPhone を活用して位置を特定するのだそう。
AirTag と iPhone とが Bluetooth 通信を行い、その位置情報が AirTag 所有者の地図に反映され、位置を特定するという仕組み。
例えば「沖縄在住の方が北海道へ旅行に行き、大切な鍵を落としてしまいました」という場合でも、鍵に AirTag をつけていれば、北海道在住の方が持つ iPhone が、沖縄の人が落とした鍵の位置を教えてくれるという感じ。
なお、この際の通信は暗号化されているので、位置情報を教えてくれた iPhone の所有者が誰であるのかはわからないようになっています。
こと日本において、スマートフォンシェアのおおよそ 5 割を iPhone が占めている言われています。これはつまり、街ゆく人の 2 人に一人が iPhone を持っているということになります。世界に目を向ければ、iPhone は 10 億台も存在しています。
超ウルトラハイパー山奥やギガンテックドチャクソ深海で AirTag を紛失しない限り、ほぼほぼ位置を特定できるだろうという安心感はいいモノですね。
iPhone 11 以降で正確な位置を把握する
iPhone 11 以降の機種を持っていれば、ウルトラワイドバンド (UWB) 機能を使うことで、センチメートル単位で正確な位置を特定することができます。
これは AirTag と連携した iPhone でのみ使用できる機能ですから、街ゆく人には特定されません。逆にいうと、連携した iPhone と AirTag の距離が Bluetooth 接続される距離まで近づかなければこの機能を使えないということになります。
使用機会としては、「外出前、家の中でなくしものをした」ですとか、「『探す』アプリである程度位置特定した後、じっくり探す」という感じになるでしょう。
ちなみになぜ iPhone 11 以降に限定されるのかというと、iPhone 11 以降に搭載されている U1 チップという特殊なチップを利用するため。iPhone 8 Plus 利用者のボクには、残念ながら使えない機能です。
iPhone 11 以降は Face ID 搭載ながら Touch ID 非対応と、コロナ禍ではなかなか使いづらい印象の強い製品でした。ところがついに、Face ID の解除を Apple Watch で可能になるアップデートが入りました。
Face ID が嫌で iPhone 8 Plus を使い続けていたボクにも、ついに買い替えの道筋が見えてきました。13 (仮)、狙います。
紛失モードで電話してもらう
AirTag は「紛失モード」に設定に設定できます。このモードの AirTag に NFC (端末を近づけることで通信する技術で、Suica など交通 IC カードでも使われている) 対応の Android 含めたスマートフォンを近づけると、AirTag 所有者の電話番号が、かざしたスマートフォンに表示されます。
かざしたスマートフォンの持ち主が親切な方だった場合は、AirTag 所有者に電話をかけてくれて、「見つけてくれてありがとう」という流れになるわけです。
電話をしてくれる人は本当に親切なのか?
ボクはこの機能、おそらく使わないだろうなと思います。なぜなら電話番号がバレるから。世の中親切な人ばかりならいいのですが、残念ながらそうではないというのがこの世界です。
「紛失モードの AirTag にスマートフォンをかざすだけかざして、電話番号を控える。そのあとはやりたい放題」なんてことも、やろうと思えばできてしまうわけです。
また、仮に紛失モードの AirTag から電話をかけてくれた人がいたとして、その人が本当に親切でかけてくれているのかも未知数です。場合によってはとんでもない高額な謝礼金を要求されたりなど、いらないトラブルに巻き込まれる可能性だって考えられます。
できれば「探す」アプリと UWB で探し切りたいところです。
AirTag にはストーカー対策機能がついている
AirTag を使ってストーカーすることはできません。あなたが所有している AirTag ではない AirTag がこっそりカバンの中に入れられたとしましょう。ずっとあなたのそばに見知らぬ AirTag が存在することになりますが、この場合あなたの iPhone が「やべー AirTag を仕込まれてるぞ」と通知で知らせてくれるようです。
GPS で位置特定しないからこそできる凄技だなあと、個人的にこの製品で最も感心したところだったりします。
「どれくらいの距離や期間近くにいたら通知が来るのか」という点については検証が必要ですね。例えば友人とお出かけした際に、友人の AirTag がストーカー判定を喰らっちゃう可能性はあるのか、とか。
ちなみに「ストーカー AirTag 見つけた!」となった場合には、電池を抜いてあげれば解決です。その途端、AirTag は機能しなくなります。逆に考えれば、AirTag をつけたものが盗まれた場合に AirTag が機能しないことがわかります。盗まれた後に、盗人が電池を抜いて仕舞えばその瞬間に終わりなので。
あくまで「紛失」防止タグ。盗難防止のためには、引き続き気をつけて生活をしなければなりません。
また、Apple は AirTag を子供やペットの迷子防止用として使用することを推奨していません。子供には GPS がついており、より正確な位置を特定可能な Apple Watch がおすすめとのこと。ペットは超ウルトラハイパー山奥にいっちゃって iPhone の検知外に出てしまうことが想定されるためだそう (流石にギガンテックドチャクソ深海には行かないでしょうけれど) 。
電池はちゃんと交換できる
Apple の公式 Web ページにおける説明がいまいち分かりづらい AirTag。特に電池に関する言及は「一年間持ちます☆」くらいしかなく、電池を交換できるのか、一年後に本体ごと交換しないといけないのかさっぱり分かりませんでした。
結論、きちんと電池交換できます。AirTag の電池残量は「探す」アプリから確認できますが、そんな頻繁にみるものでもないですから、「いざ実際に紛失したときに電池ぎれ」なんて状況になることが容易に想像できます。
あらかじめ購入日をメモしておいて、一年ごとに電池を入れ替えるマイ・ルールを作っておくことをお勧めします。
なお、AirTag に対応するのはボタン電池「CR2032」とのこと。
AirTag は本当に必要なガジェットなのか?
正直使ってみないとその真価を測ることはできませんが、正直冒頭で触れた過去記事の頃と心境は変わっておらず、基本的には必要ないものだろうと思っています。結局紛失しないよう気をつけたり、仕組みを作った方がよほどコスパがいいからです。
一方で、あって困るようなものでもないことも確かな事実です。どちらかというと自分で自分用の AirTag を買うというよりも、プレゼントやギフトとして誰かに買ってあげるのに向いた製品かもしれませんね。
ちょうど母の日が近いですから、母親用にも一つ買ってあげようと思っています。