念願の 5K モニタを購入しました。その名も「Samsung ViewFinity S9」。
使用を始めて5 ヶ月が経過したのでレビューをします。年度末の 2 ヶ月連続 xxx 時間 (自主規制) 残業を乗り越えられたのは、ひとえにこのモニタのおかげであると言っても過言ではありません。本当に。
5K 解像度の必要性と購入理由
なぜ Samsung ViewFinity S9 を購入したか


理由 1: 外付けモニタなしの生活が限界だった
以前家で使っていたウルトラワイドモニタを職場に持っていき、家ではモニタなしでの生活を 2 年間ほど続けていました。一時期ハマっていた超省電力生活の名残です。
最初こそなんとかなっていたものの、徐々にストレートネックが悪化し「これはいかん」ということでモニタを再導入することに。

理由 2: 5K 解像度 (5120 x 2880 px) があるから
ボクが職場で使っているウルトラワイドモニタの解像度は 3440×1440 px。一番平均的なやつです。
ところがこれでは解像度不足。文字表示が潰れてしまい、見づらいシーンが多発していました。
ウルトラワイドモニタの長所は作業領域の広さ。しかし広さよりも高解像度モニタによる画質の良さの方が重要なのではないかと考えての選択です。
なぜ 4K ではなく 5K 解像度が必要なのか

実は macOS が 5K 解像度に最適化されて設計されているからです (27 インチモニタの場合)。
一般的な 4K モニタでは、macOS が整数倍のスケーリングを行えず、文字が滲んで見えてしまうのです。せっかく高解像度モニタを買うのに、これではいけませんね。
では 5K の 1/2 である WQHD (2560 x 1440 px) なら整数倍で綺麗に出力できるのでしょうか?
答えは Yes です。理論上の滲みは発生しません。
しかし実際には滲んで見えます。ボクが使っているウルトラワイドモニタは、横長の 3440×1440 px で WQHD が横長になったもの。理論上は滲まないはずなのに、前述の通り滲んでしまいます。
これの原因は至ってシンプル。整数倍とかどうこう以前に、モニタの素の解像度が足りていないだけのこと。
WQHD の次の整数倍は、5K。つまり、5K しか選択肢がないのです。
なお、本件についてはオーストラリアのソフトウェア開発会社である Bjango 社が自社のブログで詳細にまとめています。

5K モニタの選択肢は、少ない
5K モニタの選択肢は非常に限られています。作ったところでメーカーには旨みがほとんどないからですね。歩留まりが悪く、Windows では 5K を必要とする場面が基本的にないため、そもそものニーズも少ないので。
そんな 5K モニタ、現実的に選択肢に上がるのはこれらになるでしょう。
選択肢 1: Apple Studio Display

最も王道を征く選択肢。Apple 純正であり、画質、音質ともに申し分ない。
ただしとにかく高価であり、さらに高さ調整機能の付与、ノングレア化にそれぞれ 4 万円近い課金が必要。

選択肢 2: ASUS ProArt PA27JCV

日本では 2025 年初頭に発売開始された新顔。
ASUS らしい堅牢な作りで、デフォルトでノングレア。価格はダントツで安いが、デザインが古臭い。

選択肢 3: BenQ PD2730S

2025 年 4 月に発売された最新鋭の 5K モニタ。
デフォルトノングレアだけれどデザインは ASUS と同様古臭めで、価格も 20 万円と強気。ViewFinity S9 が買えない環境なら、個人的には次点でこれを選ぶかも。
選択肢 4: Samsung ViewFinity S9

今回の主題。画質は申し分なく色味も MacBook にかなり近づけられる。何よりデザインがいい (Studio Display のパk)。
セール時であれば価格も手頃だが、スピーカーの音質が弱点。また入手に個人輸入が必須。
国内での取り扱いがないので、米 Amazon へのリンクを貼っておきます。
選択肢 X: Apple Pro Display XDR
6K 解像度、32 インチを誇る一つ先をいくスペックで、これも一応整数倍のスケーリングが可能。
馬鹿みたいに価格が高いが、予算が許すならこれ一択かも。金 100 万円也。

他にも中華製の 5K モニタなど、マイナーな選択肢は存在します。とはいえ現実的に、これら 4 + 1 つが主なラインナップになるでしょう。
数ある選択肢から Samsung ViewFinity S9 をチョイスした理由

当初は Apple Studio Display を購入するつもりでした。Apple 純正という画質面の保証や、キーボードで操作できる機能面などが魅力でしたから。
でも「高さ調整」オプションと「ノングレア化」(Nano Texture Glass) の付与は個人的にマスト条件で、そうすると最終的な Studio Display の購入金額は 40 万円近くにも及びます。
流石にモニタ如きにそんなにお金を出すのはバカバカしい。
そこで Stduio Display の持つ、Apple 純正故の連携機能にどこまで優位性があるのかを改めて考えてみました。
- 画面解像度: 5K は他でも叶えられる。
- 色味: 写真編集の上で重要だが、結局 Apple デバイス間でも差異がある以上、Apple 純正であろうがなかろうが大差なしと判断。
- スピーカー: 音質はいいに越したことはないが、ヘッドホンをつければ解決するのでマストではない。
- 操作性: スピーカー音量や輝度調整をキーボードからできるのは Studio Display だけ。だが最近のモニタの多くは自動輝度調整が付いていて、またスピーカー音量は一度決めれば滅多にいじる必要がないので、これもあればいい程度。
- True Tone: 「True Tone」が使えるのは Apple 純正デバイスの特権。しかしこれもオフ状態の方が正しい色味を確認できるため、不要。
こうして見ると、Studio Display は他の Apple 端末と比べて、エコシステムによる恩恵が薄いことがわかりますね。
よって、より価格の安い他社製を選ぶ方が総合的に優れていると判断。その中でも、最もデザイン製の高い Samsung ViewFinity S9 を選んだ次第です。価格もボクの購入時は新品で 999 ドルと、激烈にお得だったことも大きいです。
Samsung ViewFinity S9 レビュー

5K 解像度が素晴らしい
何よりもまず、5K の解像度は素晴らしいです。とてつもなく。
2560 x 1440 px を 2 倍スケーリングして使用するのでとにかく綺麗。くっきり。Finder や Microsoft Excel などで表示される細かい文字もしっかり視認できるので、眼精疲労が体感できるレベルで減少しました。
さらにノングレア、高さ調整である点も噛み合って、本当の意味で疲れ知らずに仕事に没頭ができます。どこぞの課金要求林檎さんとは懐の大きさが違います。
色味も素晴らしい
初期設定での色味はイマイチです。しかし海外の YouTuber である Parka 氏が、最高の設定値を紹介してくれています。
この動画に則って設定すると、MacBook Pro と並べても全く違和感がないレベルに色味を揃えることができました。ボクは比較的敏感な色覚を持っていますが、十分な色域が確保されていることを保証します。
デザインが素晴らしい

Apple Studio Display をパクったデザインには賛否両論ありますが、自分で使う分にはとても良いです。
Studio Display はアルミニウム製。一方の ViewFinity S9 はプラスチック製なので堅牢さは Studio Display に軍配が上がります。実際のところ、開封時に ViewFinity S9 に肌で触れると安っぽさを感じました。
しかし一度設置し終えてしまえば関係ありません。見た目は十分に高級感がありますから、触らなければ気になりません。
USB ポートの品質はイマイチ

モニタ背面には 4 つの USB – Type C ポートがあります。うち一つは Thunderbolt 対応なので実質自由に使えるのはたったの 3 ポート。もう少しポートの数を増やして欲しいところですね。
また電圧管理が下手くそ、もしくはノイズ対策が不足しているためか、USB マイクを直接 ViewFinity S9 を接続すると、ノイズが乗ってしまいます。
ViewFinity S9 にマイクを接続できれば、プライベートの MacBook と仕事用の MacBook を使い分けるとき、Thunderbolt ケーブルを差し替えるだけで済んだのに、このおかげでいちいちマイクまで差し替えなければならない羽目になっています。
付属の Web カメラは便利、しかし不便

ViewFinity S9 には Web カメラが付属しています。画質は一般的な Web カメラ性能に準拠しているといった感じで、特筆するものはありません。
モニタの背面に磁石で取り付けるだけで使用可能になるので、USB ポートを占有せず、この点で非常に便利です。
しかしモニタの上部を占有してしまう関係上、モニタライトと競合してしまいます。どちらか一方しかつけられない点で不便ですね。
ボクは一周回って「モニタライトはあった方がいい」という見解を持っているので、この点はそれなりに大きなデメリット。Web カメラが内蔵されている Studio Display の方に明らかな優位性がある点だと言えるでしょう。


ウルトラワイドと 5K はどっちがいいのか?

こればかりは時と場合によるとしか言えませんね。5K モニタの方がいいと思う状況、ウルトラワイドの方がいいと思う状況、並行して使用している今であっても、いまだにどちらもあります。
ではそれぞれどんな時に、「こっちの方がいい」と感じるのでしょうか。
5K モニタに優位性がある場面
- テキストを中心とした作業を行う時
- シングルタスクあるいは複雑ではないマルチタスクを行う時
- 写真編集を行う時
つまりほとんどのオフィスワークにおいて、5K モニタは快適さを担保してくれます。くっきり鮮明な画面は目の疲労も軽減してくれるため、一日中モニタに向き合い続けていても、まだ戦えると錯覚するレベルです。
ウルトラワイドモニタに優位性を感じる場面
- PowerPoint などで資料を参照しながら複雑な図面を作成する時
- 動画編集を行う時
- 大量のウィンドウを並べて PDF や動画の校正を行う時
ウルトラワイド モニタの作業領域の広さは、すなわち複数のウィンドウを大きく表示できるということ。ありきたりですが、大量の情報を一覧する必要のある場面では、画面の鮮明さ以上に情報量が重要になるため、ウルトラワイドの強みが発揮されます。
これらを踏まえて、では 5K かウルトラワイドのどちらか一方しか買えないとしたならば、ボクならどちらを買うのか。これは究極の選択とも言えるほど悩ましいです。
今のボクは、僅差で 5K モニタを選びますね。ボクの使い方として複雑なマルチタスクや動画編集を行うよりも、そうではないタスクを行う (あるいはそのようにウィンドウを運用する) 場面の方がやや多く、全体的に 5K による鮮明さの恩恵を受ける総量が大きくなるため。
また、ウルトラワイドモニタはその特性上、ディスプレイの視界占有度が高くなります。目に直接飛び込んでくる光量がその分多いということです。解像度不足との組み合わせで、目の疲労度はウルトラワイドモニタの方が明らかに大きいので、ここもボクとしては否定的な点です。
どちらを使用するべきかの結論は、使用環境によります。個人的な好みは 5K ですが、おすすめ度はウルトラワイドも同程度に高いです。5K モニタと比べて価格も安いですからね。
