7 万円 vs 10 万円
iPad Air (第 4 世代) と iPad Pro、どちらを買うか悩みがち
この記事をご覧の皆さんはすでにご存知のことと思いますが、iPad Pro は 11 インチモデル、12.9 インチモデルと、ディスプレイサイズの違いで大きく 2 種類のモデルが展開されています。iPad Pro は 非常に処理性能が高く、また最新の 12.9 インチモデルには「Liquid Retina XDR」と呼ばれるとても綺麗なディスプレイが搭載されており、Pro の名に恥じないハイスペック構成でまとまっていることが特徴です。
2021 年 5 月には Apple M1 チップ搭載の新型が発売されるなど、進化の勢いが止まらないのように見える iPad Pro。ところが、こうした新型が発売されてもいまいち界隈は盛り上がりを見せません。
理由は様々ありますが、一番の理由は「iPadOS がしょぼすぎて、iPad Pro のスペックを並大抵の人では使いきれないから」。さらに値段もハイスペックさに比例して、とんでもなく高い。
こうなってくると「本当に iPad Pro は必要なのか……?」という疑問が浮かんできます。なぜなら iPad は Pro 以外にも複数の優秀なモデル展開があり、それらモデルの方が用途によってはコストパフォーマンスが最適となる可能性が十分にあるためです。
中でも iPad Air (第 4 世代。以下 iPad Air と記載) は見た目が iPad Pro に近く、価格も Pro と比較すれば随分とお手頃なので、iPad 購入検討者の多くが Pro と Air とでどちらを選ぶか悩みまくると言います。
というわけで、今回の記事では iPad の使用用途を「ビジネスのメモ書き」「趣味のお絵かき」「動画視聴」を中心に据えたとき、果たして iPad Air と iPad Pro どちらを買うべきなのか。これについて考えてみましょう。
ちなみにボク自身は iPad Pro 12.9 インチユーザーですが、iPad Air もたびたび使用する機会があります。この経験を活かして、なるべく俯瞰的な視点でまとめていきます。
iPad Air と iPad Pro の比較
iPad Air と iPad Pro の価格差はおおよそ 3〜6 万円ほど。この価格差がすなわちスペック差な訳ですが、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。実際に使用していて明らかに体験が異なってくる、大きな違い 3 つをピックアップしてみます。
60 Hz vs 120 Hz (手書き性能差)
まず両者で大きく差がつくのが、画面のリフレッシュレート (滑らかさ) の違い。リフレッシュレートとは、1 秒間に何回ディスプレイの描画を更新できるかを表した数値のことで、60 Hz ならば 1 秒間に 60 回、120 Hz ならば 1 秒間に 120 回画面が更新されます。要するに、数値が高いほど画面が滑らかに動きます。
iPad Air が 60 Hz、iPad Pro が 120Hz のディスプレイを搭載しています。実際に使用していて、最もこの差を感じる瞬間は「手書きで文字を書く瞬間」です。リフレッシュレートが高いほど、画面の更新が早くなる。つまり、手書き入力に使用するペンの追従性もその分高くなるということです。
iPad Air (60Hz) での書き心地は決して悪いわけではありませんが、やはりアナログのペンと紙の組み合わせと比べると明らかな遅延があり、速筆しようとすればするほどこれがストレスに感じます。
一方の iPad Pro (120 Hz) はアナログのペンと紙の組み合わせと比較しても、ほとんどストレスなく手書き入力をすることが可能です。なんならデジタルに書いたほうが綺麗に書ける説まであります。
この点に関しては、一度 Pro の書き味を知ってしまうとなかなか Air には戻りたくないという心理が働いてしまうほど、影響力の大きな違いと言えるでしょう。
ディスプレイサイズ (本体サイズ・重量差)
続いてサイズ差。iPad Air は 10.9 インチ、iPad Pro は前述の通り 11 インチと 12.9 インチの 2 モデル展開になっています。このディスプレイサイズに伴って考えるべき数値を以下の表にまとめてみました。
iPad Air (第 4 世代) | iPad Pro 11 インチ | iPad Pro 12.9 インチ | |
価格 | 69,080 円〜 | 94,800 円〜 | 129,800 円〜 |
ディスプレイサイズ | 10.9 | 11 | 12.9 |
解像度 | 2,360 x 1,640 | 2,388 x 1,668 | 2,732 x 2,048 |
dpi | 264 | 264 | 264 |
本体サイズ | w:175.8 mm / h: 247.6 mm / d: 6.1 mm | w:178.5 mm / h: 247.6 mm / d: 5.9 mm | w:214.9 mm / h: 280.6 mm / d: 6.4 mm |
本体重量 | 458 g | 466 g | 682 g |
Smart Folio 着用時重量 | 640 g | 648 g | 934 g |
Smart Keyboard Folio 着用時重量 | 751 g | 759 g | 1,090 g |
Magic Keyboard 着用時重量 | 1,054 g | 1,062 g | 1,383 g |
優秀な部分を黄色で、劣っている部分を青色でまとめました。
表を見れば一目瞭然で、最もディスプレイサイズの小さい (とは言っても Pro と 0.1 インチ差) の iPad Air がサイズ、重量で Pro よりコンパクトであることがわかります。一方の iPad Pro 12.9 インチは、その巨大なディスプレイを代償に、圧倒的なサイズと重さを背負う形に。
意外だったのが iPad Pro 11 インチ。なんとこれら 3 モデルの中で最も厚みが薄いようです。さらに iPad Air と比べてみてもそこまで重量に差はありませんから、重さやサイズのコンパクトさを重視している方にとって、iPad Air と並ぶ選択肢として十分なり得そうです。
いずれのモデルも共通して言えることは、トラックパッド + キーボード付きのケース「Magic Keyboard」を装着してしまうと、それはもう下手なラップトップ PC よりも重たくなってしまうということ。
PC 的な運用をメインでお考えなら、冒頭でも触れた通り iPadOS がとんでもなく足を引っ張ってしまっているので、素直に PC を購入した方がよほどお得で、かつ作業効率も良くなることでしょう。
スピーカー
iPad Air と iPad Pro で、スピーカーの搭載数が異なります。Air が 2 機、Pro が 4 機。つまり音を出す機構の数が、Pro の方が 2 倍多く実装されています。この差によってドルビーアトモス再生 (空間オーディオ。立体音響とも) の使用可否が決まります。当然スピーカー数の充実している Pro でのみ使用可能。Air では使用不可能です。
ドルビーアトモス再生によって、Apple Music や対応する映像視聴時の体験がよりリッチになると Apple は謳っています。
メディア再生を iPad のメイン用途としてお考えの方は、一考すべきポイントのようにも思えますが、実際には AirPods Pro など Apple 製の外付けオーディオ機器を使用することによって同機能を体験することができるので、思いのほか重要なポイントではないのかもしれません。
手書きの重要さ、出先で使用するかが判断ポイント
改めて iPad の使用用途を「ビジネスのメモ書き」「趣味のお絵かき」「動画視聴」を中心に据えたときの場合を想定してみましょう。
「ビジネスのメモ書き」「趣味のお絵かき」で共通して重要になってくるのはペンの使いやすさ。すなわちディスプレイのリフレッシュレートの高い iPad Pro が有利です。やはり Pro の書き味に慣れた後に Air で手書きを行うと、どうしてもペン入力に遅延があるように感じられ、思うように書き記すことができません。
また、「ビジネスのメモ書き」用途に焦点を当てると、今度は加えて携帯製の重要さが一気に増してきます。つまり、サイズと重さがコンパクトであって欲しいのです。据え置きとして使用する分には画面サイズの大きな iPad 12.9 インチはとても快適です。ただし、その分とにかくデカイし、重たい。
例えば片手で iPad Pro 12.9 インチを持ち抱えつつメモを書こうとしても、ボクはすぐに諦めてしまいます。なぜならカバーなしの状態ですらあまりに重たく、すぐに腕が疲れてしまってメモ書きのフォームを維持できないのです。少しでもモバイル用途を考えているのならば、やはり軽量な Air もしくは Pro 11 インチを選択すべきでしょう。
少しだけ補足をしておくと、Air や Pro 11 インチを選択したとしても、メモ書きの時にはケースを外しての運用を考えるべきかもしれません。ケース未着用でも重たい iPad Pro 12.9 インチの重量は、おおよそ 680 g。対する最も軽いケース「Smart Folio」を着用した iPad Air または iPad Pro 11 インチの重量も、これに近い約 650 g の重さになってしまうため。
さて、もう一つの想定用途である「動画視聴」。ぶっちゃけこれは Air だろうと Pro だろうと、あるいは 12.9 インチだろうとそんなに変わりません。所詮モバイルできる程度のディスプレイサイズかつ、スピーカーサイズですから、そこに大きな体験さは生まれないのです。
コンテンツをしっかりと楽しみたいなら、やはりドデカい据え置きディスプレイを別途用意すべきだし、またそれなりのスピーカーなり、ヘッドホンなりを用意すればその分 QOL が上がります。これら外部出力を活用するならデフォルトの iPad スペックはそこまで関係がないよねとなってしまいます。
強いて言えば、「動画視聴」用途においてもやはり携帯製については考えておく必要があるでしょう。前述の通り、12.9 インチは携帯するにはあまりにも大きすぎます。特に電車移動中など出先における動画視聴を試みた場合、重たさで腕が疲れてしまうほか、その大きすぎる画面によって他の乗客から何をみているかが丸わかり。当然動画だけでなく、雑誌や Web ブラウジングだって同様です。プライバシーなんてあったもんじゃありません。
手書き重視なら iPad Pro 11 インチがオススメ
ということで、ボクが次にもし iPad を買うとするなら、おそらく iPad Pro 11 インチを選択すると思います。やっぱり 120 Hz の手書き入力の快適さは捨てられません。ただ、いますぐ手持ちの 12.9 インチを手放してでも乗り換えたいかと言われると、そんなこともありません。
やはり iPad は所詮タブレットなのです。あらゆる作業においてメイン機体にはなり得ず、どこまで行ってもサブポジション。ボクはそこまで iPad を酷使しないので、10 万円近い金額を出してまで買い換えようというモチベーションが湧かないのです。
逆に言えば、明確な用途がこなせるのであればどのモデルを買ってもある程度満足感はあるし、どのモデルにしても致命的な使いづらさを孕む可能性はそこまで高くないとも言えます。
一度購入したら長く使えるデバイスだからこそ、慎重にモデルを選択していきたいところです。