14 インチ MacBook Pro (M1 Pro) を仕事用に導入して一ヶ月が経過しました。
日常業務での使い勝手はどうなのか。Intel MacBook Air から乗り換えて違和感はないのか。M1 MacBook Air との使い心地に差はあるのか。詳細にレビューしたいと思います。
※ 本記事では 14 インチ MacBook Pro のことを MacBook Pro として表記します。レビューの内容には 13 インチ MacBook Pro および 16 インチ MacBook Pro と異なる内容が含まれる可能性があります。
【前置き】レビュー対象の 14 インチ MacBook Pro について
スペックは M1 Pro 上位版の吊るしです。
- SoC: M1 Pro (CPU 10 コア / GPU 16 コア)
- RAM: 16 GB
- SSD: 1 TB
CPU は上位版の M1 Pro にしています。ストレージは上位 M1 Pro を選ぶと自動的に 1 TB に増量されます。
この M1 Pro を手に入れるよりも以前、もともと仕事では MacBook Air (Retina, 13-inch, 2020) を使っていました。最後の Intel 入ってる世代の MacBook Air です。
CPU は i5、メモリは 16 GB とそれなりに強化したスペックでしたが、ぶっちゃけかなり不満がたまるものでした。
OneDrive にアップロードする、Teams 会議をする、PowerPoint を私用する、etc……。
「え、こんなもんで?」と思うような作業でも、簡単にサーマルスロットリングを起こしてしまうのです。とは言ったものの、完全に仕事ができないかわけでもないのが憎たらしい感じでした。
M1 Pro MacBook Pro を導入したのは、そんな Intel MacBook Air ではもはや完全にスペック不足となってしまう事態にぶち当たってしまったため。
というのも、最近は業務の範囲が広がり出張先で急遽動画編集をしなくてはならない場面がそれなりにあったりします。
残念ながら Intel MacBook Air では Premier Pro なんてほとんど動きません。編集画面はカクカク、なんならタイムラインを増やした瞬間にクラッシュです。
Photoshop や Illustrator、InDesign なんかの Adobe ソフトもまあそこそこの頻度で使う機会があります。これらも言うまでもなくカクカク。レイヤー数の多い重たいファイルなんかだと開けないことも。
ということで、これは仕事にならんと M1 Pro に乗り換えた次第。持ち運ぶ機会が多いので、16 インチではなく 14 インチです。
私用で所有している M1 での経験から、ぶっちゃけ M1 でも十分説はありました。まあせっかく手に入るならってことで M1 Pro。M1 MAX は流石に予算オーバーかつオーバースペック度合いが過ぎるかなと。
仕事でよく使うアプリケーション一覧
以降のレビュー内容の裏付けのために、仕事でそれなりに使う機会があるアプリケーションの一覧を記しておきます。
- Microsoft 365
- Word
- Excel
- PowerPoint
- OneDrive
- Teams
- Adobe CC
- Premiere Pro
- Photoshop
- Illustrator
- InDesign
- Acrobat Pro DC
- その他
- Zoom
- Slack
- Notion
- etc…
キーボードの違和感はある。ただし許容範囲
タイピング中、McaBook Air と比べると若干の違和感はやっぱりありますね。ただ思っていたほど致命的ではないです。慣れた結果、個人的には MacBook Pro の方がタイピングしやすいです。
なにせキーボードは個人的に Mac の乗り換えに当たって一番心配だった要素です。
なぜならボクはキーピッチ (キーの間隔) やキーストローク (キーの深さ) の違いにかなり敏感。例えば Surface シリーズでも型番の違いによって打ち心地が違うことに、とてつもないストレスを覚えていました。
そんなボクですが、MacBook Pro のキーボードは MacBook Air のそれと比べて僅かな違和感があるくらいの感覚で使えています。少なくともこの違和感によってタイピングミスが誘発されるってことはない。そんなレベル感です。
最も違和感覚えたのは、キーストロークと、跳ね返りの強さ。MacBook Pro のほうがキーストロークがやや深く、また跳ね返りが強く感じます。
正直、初めて MacBook Pro を触った時点ではこの違いに気がつきませんでした。新品だからちょっと押し心地が違うのかなとか、その程度の感覚だった記憶があります。
これを違和感として認識したのは、MacBook Pro の後に MacBook Air を触った時です。キーストロークと跳ね返りの強さに明らかな違いがあると気がつきました。
MacBook Air のキーボードは随分ペチペチとした打鍵感だと感じるようになりました。結果、MacBook Pro と同じノリで MacBook Air でタイピングするとストロークの浅さが原因で指に多少の痛みを感じしまうように。打ち心地、タイピング音から若干安っぽさも感じますね。
さすが「Pro」というだけあって、MacBook Pro のキーボードには高級感があります。
また、キーボードのレイアウトも、MacBook Pro と MacBook Air とで微妙に違います。画像で比較してみましょう。
一番の違いはファンクションキーのデカさ。MacBook Pro はファンクションキーがバカデカいです。数字の 1、バックスペースキーの大きさもだいぶ違いますね。あとはキーピッチ。MacBook Pro の方が気持ち広いことがわかります。
実際に使ってみるまではどちらかというと、ストロークの違いよりもレイアウト違いの方が使い心地に支障をきたすだろうと思っていました。でも違いました。レイアウトの違いはほぼ全く気になりません。ストロークの違いの方が想像以上に影響しました。
ボクみたいにキーボードの違いに敏感で、なおかつ MacBook Pro と MacBook Air を併用する必要のある人は少し気をつけた方がいいかもしれません。
視線、首の角度問題は大して解決しない
14 インチになって地味に期待していたこと。それは視線と首の角度の改善です。
ノートパソコンを使うときはどうしても視線が下がります。ディスプレイの位置が低いですからね。特に MacBook Air は 13 インチなので、かなり視線が下に向きます。
その結果、めちゃくちゃ首がこります。ストレートネックなどの症状にもつながることも珍しくありません。
これに対して MacBook Pro は 14 インチ。MacBook Air と比べるとたった 1 インチしか差はありませんが、それでも Apple Store で実物を見ると、1 インチとは思えないほど画面の大きさにインパクトがありました。
ということで、視線や首の角度の改善に期待ができるのではと思っていました。
残念なことに、現実はマジレスしてきます。14 インチ MacBook Pro でもやっぱり首は疲れます。理由は簡単で、大して視線が変わらなかったため。
確かにディスプレイサイズは大きくなり、ベゼルも細くなったので多少は改善されましたよ。でも、その差は微々たるものです。
そして、本質的なノートパソコンの限界に気がつきました。
というのも、ボクは画面の大きさを生かすべく、なるべくディスプレイの上の方を使って作業するように心がけていました。しかしながら、作業を進めるうち、どこかで必ずディスプレイの下限を使わざるを得ない場面に直面してしまうことは避けられないことがわかったのです。
例えば Word で書類を作成中のこと。カーソル位置をディスプレイ最上部にセットしてタイピングを続けていくうち、カーソル位置はそのうち画面最下部にまで移動しています。はい視線は下に。首も大変。
Slack などのチャットツールもテキスト入力欄が画面下にあるデザインになっていることがほとんどです。
このように、特にテキストを扱う仕事をする時には、どう足掻いても画面下に視線を持っていかざるを得ないんですですよね。追い打ちをかけるように、動画編集のシーケンスも画面下です。
16 インチ MacBook Pro だったとしても、きっと同じような現象に悩まされることでしょう。なぜならいくら画面が大きくても、画面下限の位置はどの MacBook モデルもほとんど共通しているから。これはつまり、ノートパソコンの限界ですよね。
結局、外部ディスプレイを用意して、視線を上げて作業するのが最も体に優しいというわけです。
MagSafe、意外とマジで便利
一番意外だったのが MagSafe です。まさかこんなに気にいるとは思いもしませんでした。
正直、MacBook Pro を入手するまでは MagSafe に全く期待していませんでした。それどころか、「なんでまた持ち運ぶ必要のあるケーブル端子を増やしてしまうんだよ。USB Type-C に統一しろや」と憤慨していたくらいです。
実際に使ってみると、これがかなりいいんです。充電が本当に楽。USB Type-C と違って、ケーブルの抜き挿しに力を入れる必要がないのがとてもいい。
挿す時はポートに近づけるだけで勝手に「パチッ」っとついてくれ、外す時は縦軸方向に斜めにすればほとんど力を入れずに抜くことができます。
懸念していたケーブル端子増やすな問題は簡単に解決できます。「持ち運ばない」、これだけ。
なぜ持ち歩かないでも大丈夫なのか。それは MacBook Pro が USB Type-C からの充電にも対応しているから。外出先では今まで通り USB Type-C で充電してしまえばいいというわけです。
ちなみに M1 Pro には 90 W のクソデカ電源が同梱物としてついてきますが、これも外出先には今のところ不要に感じています。MacBook Air 用に買っていた、Anker の 45 W 電源でも全く支障なく充電ができているからです。
M1 MacBook Air と遜色ないほど M1 Pro もバッテリー持続時間がアホほど長いので、これまた支障につながらない要因になっています。
ノッチは気になることもあれば、気にならないこともある
iPhone で大不評なノッチ。なぜか Mac にも取り入れられるとなって当初界隈は阿鼻叫喚。かくいうボクも「あり得へんやろ……」と絶望していました。
で、実際に使うとどうなのか。
結論は気になることもあるし、気にならないこともある。そんな感じです。
気にならない場面の方がどちらかというとギリギリ多いかなーーー。意外と目立たないし、作業上の障害になる状況が少ないからです。
逆に気になる場面は、Adobe 製品のようにメニューバーを使う機会が多いかつメニューの項目が多いアプリケーションで作業するとき。
メニューがノッチ部分を避けて不自然な感覚が開いてしまうため、マウスカーソルの移動量が増えて鬱陶しいです。正直ノッチはない方がいいです、絶対。
Intel と比べると処理が高速過ぎてマジで仕事が捗る
Intel MacBook Air と比較すると全てが段違いに速いです。私用で M1 MacBook Air を持っているのである程度予想はついていましたが、それでもやっぱり感動するレベル。
アプリケーションの起動が爆速
Intel 時代、Excel や PowerPoint などのアプリケーションを立ち上げようとすると、それだけで 1 分間くらいの時間を要していました。対する M1 Pro だと、10 秒もかからずに起動しますね。とっても快適になりました。
とはいえそれでも 10 秒。Windows でまともなスペックな PC だと Office の起動に 5 秒もかかりません。
もうちょっと Windows 並に快適になって欲しいというのが正直なところです。
また、Adobe 系のソフトも起動がそれなりに速くなったものの、まだまだ全然遅いです。こちらももう少し速くなってほしいですね。
Teams 会議中でもタイピングができる
Windows ユーザーがこの見出しを見ると「お前は何を言ってるんだ」となるかもしれません。なんと Intel MacBook Air だと、Teams 会議中はまともにタイピングができなくなります。
Teams 会議は競合 Web 会議ツールの Zoom と違って、アホほどマシンリソースを消費します。
その結果、会議が始まった瞬間からサーマルスロットリングが発動。この状態でテキストを入力を試みると、タイピングした 5 秒後くらいに遅れて画面上に反映されます。状況次第ではもっと遅くなることも。さながら MacBook Air がいっこく堂のモノマネを始めた、まるでそんな感じ。
一体いつの先行入力が働いているのかわからなくなってしまうので、Teams 会議中はメモや議事録を取ることが物理的に困難。なのでボクは Teams 会議が本当に嫌いです。
そんな Teams 会議でも、M1 Pro MacBook Pro なら流石に余裕ですね。全く動作に問題は起こりませんし、バッテリー消費も増えることなく、もちろんファンも回りません。
それでも CPU 使用率を見ると、それなりにマシンスペックを消費していることがわかります。Microsoft さん、さっさと改善をよろしくお願いいたします。
ちなみに Intel MacBook Air では、PowerPoint を使うときにもファンが大回転します。「Office を使うくらいには十分」という表現がよく使われますが、そういう意味で Intel MacBook Air は「Office を使えないこともない」くらいの表現が適切かなと、今になると思います。
OneDrive を使ってもファンが回らない
Intel MacBook Air で最もストレスがかかっていた要素の一つ、OneDrive。
さて、コピーやファイルのアップロード・ダウンロードは、実はめちゃくちゃマシンスペックを消費する行為であることをみなさんご存知でしょうか。
PC を使う上でファイルのコピーは日常茶飯事に行う行為です。OneDrive 上でコピーをすると、コピーと同時にクラウドサーバーへのアップロード・ダウンロードが始まります。
結果、ファイルアップロード・ダウンロード中の Intel MacBook Air のファンが暴走。サーマルスロットリングを起こしてこれまたタイピングがスムーズにできなくなります。
Office ファイル単品とかのコピーなら全然問題ないんですが、大量の写真とか、ファイルサイズの大きな動画とか、この辺りのデータを取り扱うとしばらく業務を諦めたくなるくらいに挙動が不安定になります。
M1 Pro なら当然そんなことはありません。OneDrive インストール直後で 500 GB 分くらいのデータを同期中でも CPU 使用率にまだ余裕があります。ファンも回る気配がありません。
同期の速度も半端じゃなく速いです。500 GB の同期に Intel MacBook Air だと半日かかっていたところ、M1 Pro だと 20 分もかからないうちに終わってしまいました。強すぎる。
M1 と比べると高性能さを体感しづらい
まあ Intel と比べると M1 Pro が強いのは当たり前ですよね。
では M1 MacBook Air と比べるとどうなのか。
使用するアプリケーションに共通するものがないので正確な調査はできませんが、正直「M1 Pro めちゃすげーー! 家にも M1 Pro 欲しくなるーー!!」とは今のところ感じず、体感できる性能差はほぼありません。
M1 Pro はオーバースペックなんでしょうね。ただ、今までの経験上オーバースペックで後悔することは (電気代を除いて) ありません。むしろ PC はいざという時のためにオーバースペック気味に買うべきだとも思います。
そういう意味では安心して PC 業務に勤しむことができるので、M1 Pro を手に入れることができて本当に良かったと思っています。
M1 と比べて体感できるのは「ディスプレイ」「スピーカー」「インカメラ」「SD カードスロット」
性能面では M1 と M1 Pro の差をほとんど体感できないことは先に述べた通りです。でも圧倒的に違いを感じる部分がいくつかあります。それが「ディスプレイ」「スピーカー」、そして「インカメラ」の 3 点です。
いずれも MacBook Air とは比べ物にならないほどハイクオリティ。
ディスプレイはコントラストが高過ぎて眩しさすら覚えるほど。MacBook Pro で作業した直後に MacBook Air で作業をすると露骨に物足りなさを感じてしまいます。
スピーカーもすでに散々レビューされていますが、音圧が桁違い。
一番ビビるのはインカメラです。Zoom や Teams 会議で顔出しをするとき、周囲と比べて一人だけ浮いてしまうほど高画質に映ります。
SD カードスロットはシンプルに便利ですね。
ProMotion ディスプレイの恩恵は「ない」
MacBook Pro は最大 120 Hz に対応した可変フレームレートの「ProMotion ディスプレイ」に対応しています。MacBook Air は最大 60 Hz なので、比較して 2 倍ヌルヌルに画面が動くということ。
ぶっちゃけると全然恩恵を感じられないです。ヌルヌルさを実感できないわけではありません。これが生産性につながっているとはとても思えない。そういうことです。
同じく ProMotion ディスプレイ 搭載の iPad Pro を所有しているので正直不要であることはわかっていたんですが、PC で 120 Hz 対応ディスプレイを使ったことがなかったので少し期待していたのも事実。
やっぱりいらないかなあ。Mac ではゲームできないし。120 fps の動画編集をするときなんかは役に立つのかもしれませんが。
まとめ: ハイスペック PC、最高です。
仕事用にはハイスペックすぎる部分が多少あるかもしれませんが、少なくとも言えることはやっぱり低スペック PC は使うべきではないですね。明らかに仕事の効率が変わります。
まだ M1 を持っていなくて、それなりに重たい作業をするんだって人には M1 Pro に手を出すことは悪くない選択肢だと思います。作業環境の劇的改善が完璧に約束されますからね。
M1 から乗り換えるか価値があるかと言われると、正直なんとも言えません。画質は綺麗だし、スピーカーの音もいい。逆に言えば、M1 の性能に満足している人にとっての付加価値はそれだけ。あとは SD カードスロットをどれだけ使うかですね。
M1 は 10 万円前半、M1 Pro は 20 万円前半から購入することができます。なかなか難しい選択肢だと思いますが、どちらを買っても後悔することはほとんどないだろうということは、これまでの経験から自信を持って言えそうです。