【検証】「M1 Pro」なら「M1」じゃできない重たい動画編集も可能?

ボクが初めて「M1」の限界にぶち当たったのが動画編集。

4K・24p の素材データ 4 本と字幕 4 本、画像 1 枚の合計 9 トラックあるタイムラインを書き出そうとすると、M1 MacBook Air は確定でクラッシュしてしまいました。

当時の様子は以下の記事でまとめています。

この動画編集データは、M1 の上位モデル「M1 Pro」なら処理できるのでしょうか? それとも「M1 Pro」でも力不足で、このクラスの動画を編集するためにはさらに上位の「M1 MAX」が必要なのでしょうか?

今回はこれを検証します。

検証に使用する M1 Pro MacBook Pro のスペックは以下の通りです。

  • 機種: 14 インチ MacBook Pro (2021)
  • SoC: Apple M1 Pro (10 コア CPU、16 コア GPU)
  • RAM: 16 GB
  • SSD: 1 TB
M1 チップ搭載 MacBook Air vs. M1 Pro チップ搭載 MacBook Pro
目次

M1 Pro つよし、M1 にできないことを平然とやってのける

結論からお伝えすると、M1 Pro だと余裕で書き出しに成功しました。正直 M1 Pro は M1 に毛が生えた程度の大したことないやつだと思い込んでいたので、この結果には驚かされました。

動画書き出し成功通知
書き出し成功の通知。まさか成功するとは予想できず。

M1 で処理できない動画編集データとはどんなものなのか

今回の検証に使用した編集データは、当然ですが M1 で処理できなかったものと全く同じものを使用しました。

Final Cut Pro 編集画面
検証に使用した編集データ。最大 9 トラック。

この編集データは 4 種類のカメラの性能比較で、一画面に最大 4 動画、加えてカメラ名を記載した字幕 4 個と画像を 1 枚挿入して、最大合計 9 トラックで構成されています。

M1 MacBook Air で書き出しを試みると、9 トラックエリアに突入した瞬間に爆破。冒頭で述べた通り、メモリ使用量がオーバーフローしてしまい、確定で書き出しに失敗してしまいます。

何度もトライし続けるとマシンに負荷がかかりすぎて macOS がクラッシュする始末。

M1 MacBook Air で動画書き出し中のメモリ使用量
メモリ 16 GB しかないのに 30 GB 以上要求されて沈む直前の M1 Mac の図

書き出しに至る前、動画のレンダリング処理中にも CPU 性能が足りず、サーマルスロットリングを起こして動作が停止してしまうこともしばしばです。

M1 MacBook Air で動画編集中の CPU 使用率
編集中も余裕なし。サーマルスロットリングでゲージが真っ赤になることも。

M1 Pro はこの編集データも軽々扱う

M1 Pro でこの編集データを取り込んだ瞬間から、「こいつは一味違うぞ」ということがわかりました。

まず M1 と違って、全く発熱しないのです。当然ファンも回りません。

編集中の動作もサクサクで、編集タイムラインをドラッグしてシークしたり、何倍速で再生してもほぼかくつきません。

さらに書き出し中の安定性も雲泥の差がありました。

どんな時でも CPU は余裕てんこ盛り。そして書き出しによりパワーを持っていかれる GPU も、使用率が 100 % に張り付くことがほとんどなかったのです。

M1 Pro の CPU 使用率推移。編集中、書き出し中どちらの状況でもほぼ使われない模様。
書き出し中の M1 Pro の GPU 使用率。全体的に余裕を感じます。

そして、最も驚くべきポイントが他にあります。そう、メモリの問題です。

今回検証に使った M1 Pro は、16 GB モデル。つまり、クラッシュして書き出しができなかった M1 MacBook Air と同量の積載量です。

それなのに、M1 Pro だと大幅にメモリの使用率が抑えらることがわかりました。

書き出しが 9 トラック部分に突入した時点で一瞬使用済みメモリが 16 GB を突破してスワップが発生するものの、すぐさま状況が改善され、9 GB 前後まで落ち着きます。

この状況はメモリプレッシャーのグラフがかなり歪な形になっていることから見て取れます。

M1 Pro で書き出した際のメモリ使用率推移

M1 にはない「メディアエンジン」の力が生んだ性能差

M1 Pro がなぜこんなにも M1 と比べて快適に動画編集することができるのか。

その理由は単純なスペック差によるものもありますが、それ以上に「メディアエンジン」の有無が大きな差を生んでいます。

メディアエンジンとは M1 Pro 以降の Apple Silicon に搭載された、CPU や GPU とは異なる処理回路です。

メディアエンジンは ProRes (RAWも含む) や HEVC、H.264 など、多彩な動画ファイルのエンコードやデコードを行う専用処理回路で、Final Cut Pro での動画編集時における処理はほとんどこのメディアエンジンの守備範囲です。

ですからこのメディアエンジンがガンガンに働いてくれていたおかげで、M1 MacBook Air と比較して、M1 Pro は全体的なマシンリソースに余裕があったのだと考えられます。

メモリの使用率についても同様に、メディアエンジンによって書き出しが高速処理されるため、メモリに情報を蓄えておかなければならない時間が短縮されて、16 GB メモリでもなんとかごまかしが効いたのではないかと。

つまり、メモリ量による安定性はさておいて、4K・24p 素材の動画編集を行う分には M1 Pro の性能ですでに十分、M1 MAX までは不要な可能性が高いということになります。

モーションフラフィックを使わない Vlog 程度に M1 MAX は不要ってこと

注意が必要なのが、モーショングラフィックはメディアエンジンの守備範囲外だということです。

After Effect で作るようなアニメーションはもちろん、Final Cut Pro で挿入する字幕なんかもメディアエンジンの対象外。

動画や画像素材以外の素材を大量に使うような編集シーンでは、M1 Pro では力不足に陥るシーンも多々発生しそうです。

このようなより深いニーズをお持ちの方は、M1 MAX の購入も検討するべきでしょう。

M1 Pro 16 インチ MacBook Pro を購入しました

今回の検証によって、ボクの用途で最大瞬間風速を叩き出す動画編集を行っても、M1 Pro でメモリさえ積んでいれば余裕で処理できることがわかりました。

ということで、ついに M1 Pro 搭載の 16 インチ MacBook Pro をポチってしまいました。

正直な気持ちで言えば、M2 Pro かつ、おそらく登場するであろうメモリ 48 GB カスタムモデルを購入したかったんですが、背に腹は変えられない理由で M1 Pro モデルの購入を決断しました。

なぜ M1 Pro 16 インチ MacBook Pro の購入を決断したのかについては、過去記事でまとめています。ぜひこちらもご覧ください。

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