「Apple M1 (ARM SoC)」によって自作 PC がなくなる未来

個別にパーツを選べなくなるかも?

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Apple M1 についておさらい

コンピューティングに革命をもたらしたと賞賛される Apple M1。2020 年 11 月 11 日に発表された同チップは SoC (System-on-a-chip)と呼ばれるもので、一般的な計算を行う CPU だけでなくメモリや GPU、画像エンジン、機械学習エンジンといった、さまざまな専用チップをひとつにまとめていることが最大の特徴です。

これにより、コンピュータ内部でにおける情報のやりとりに必要な距離が格段に短くなり、結果としてとてつもない処理効率を実現しています。さらに、ここまで数多の機能を詰め込んでいるにもかかわらず、TDP はわずか 10 – 15 W に収まるといいます。

Apple M1 が CPU シングルスコアで匹敵する「AMD Ryzen 5950X」は TDP 105 W。CPU マルチスコアで匹敵する「Intel Core i9-9980HK」は TDP 45 W。GPU 性能で匹敵する「NVIDIA GTX 1050 Ti」は TDP 75 W。極論ではありますが、従来環境で M1 チップの性能を実現しようとすると TDP 120 – 180 W が必要となる計算でした。M1 の省電力さがいかに驚異的であるかがとてもよくわかると思います。

この省電力の中に AMD Ryzen 5950X や インテル Core i9-9980HK、NVIDIA GTX 1050 Ti などそうそうたる PC パーツに匹敵する性能を持ち合わせているからこそ、コンピューティングの革命と言われているわけです。

さて、Apple M1 は ARM ホールディングスが所有する「ARM アーキテクチャ」によって作られています。ARM アーキテクチャは消費電力を抑える特徴を持ち、これまでスマートフォンをはじめとするモバイル機器に多く搭載されてきました。iPhone や iPad も例に漏れず、ARM アーキテクチャによって作られた SoC を搭載しています。

iPhone や iPad で培ってきた省電力と高性能の両立技術を Mac 向けにカスタマイズして生まれた Apple M1。従来の Intel モデルとはアーキテクチャ (コンピュータの基本設計) から異なります。これまでのルールを逸脱したからこそ、途方もないほど急速な性能向上を実現できたわけです。

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ARM アーキテクチャの波が Windows にも迫りつつある

Apple M1 が ARM アーキテクチャによって作られていることはすでに述べてきた通りです。それではなぜ、ここまで高性能が期待できたはずのテクノロジーに Apple や Microsoft は 2020 年になるまで着手してこなかったのでしょうか。

現行 PC 向け CPU 主流の規格は「x64」といい、Windows や macOS をはじめとする OS を含めた多くの各種ソフトウェアはこの規格上で動くように設計されています。ARM アーキテクチャへ乗り換えるためにはただハードウェアを載せ替えれば完了というわけにはいかず、これらソフトウェアが ARM アーキテクチャ上で動くように調整しなければならないのです。

PC、特に Windows は互換性を大切に開発されてきていたので、規格の乗り換えに各社あまり本腰を入れていませんでした。

ただし、本腰を入れていなかっただけで実は乗り換えの動きは以前からありました。代表的な例が. Microsoft と Qualcomm が共同開発した ARM アーキテクチャの SoC を備えた 2020 年 1 月発売「Surface Pro X」の存在。実は Apple よりも先に、Microsoft は PC の ARM アーキテクチャ採用を進めていたのです。

とはいえこの「Surface Pro X」はお世辞にも性能が優れているとはいえませんでした。同年 10 月にマイナーチェンジ版が発売されるものの、これも同様。さらに、多くのソフトウェアが ARM 向けに調整されておらず、事実上「新しい時代を体験するためのおもちゃ」といった存在でした。

Microsoft が足踏みしているところに突如現れたのが Apple M1。Apple は高性能な M1 チップを搭載するだけでなく、多くのソフトウェアが ARM アーキテクチャ上でも問題なく動くよう調整した上で世の中に排出してきたのです。この戦略は世の中のユーザーに大きな影響を及ぼし、M1 搭載の Mac mini は発売からたった 1 週間で 2020 年の国内デスクトップ市場売り上げ 1 位を達成することになりました。

この流れを受けて、マイクロソフトもいよいよ ARM アーキテクチャへの乗り換えに本腰を入れ始めたと米 Bloomberg が報じています。まずは自社のデータセンター向け、そしておいおい Surface 向けのチップを開発していくとのこと。自社でチップを用意したほうが、Intel 製品などを利用するよりも性能やコスト面で有利だとし、同誌はそれがおもな理由と推測しているようです。

また、インテルも ARM との協業要請を申請したとの噂があります。x64 からの脱却が大きな狙いだと考えられ、ますます x64 の時代の終焉が近づいてきていることが感じられます。

これらプロジェクトが CPU 開発にとどまるのか、SoC 開発にまで及ぶのか現時点では不明です。ただ、あくまで推測に過ぎませんが特に前者は競合の Apple が PC に SoC を搭載してきたことを鑑みると、独自の SoC を開発してくるのではないかと考えています。

SoC 化が進めば自作パーツは市場から消滅する?

すべての機能を一つのチップに埋め込んだ SoC が、パーツごとに担う役割をあてがってきた従来の方式と比べ性能面でも消費電力面でも優位であることは明らかです。

自作 PC は CPU や GPU、メモリなどの各パーツをそれぞれ用途に応じて必要な性能を吟味し、組み合わせることによって作り上げるもの。今後 SoC の普及が進めば、パーツごとに吟味する従来の自作 PC の形式はなくなり、必要な性能をカバーする SoC をひとつ選択すれば終わり。そんな未来がやってくるのではないかなと思っています。サイズも劇的に小さくなって、ミドルタワーとかミニタワーとか、ケースの選択肢もほとんどなくなるかも、とも。

2021 年 1 月時点ではまだ、Apple M1 の性能は特にグラフィック能力においてデスクトップ PC に遠く及びません。それでもムーアの法則を考えれば ARM アーキテクチャの SoC が現行のデスクトップ PC 性能に追いつくのは時間の問題とも考えられます。

この記事を書きはじめた当初は「自作 PC がなくなったら趣味がひとつなくなるなあ」とやや悲観気味でした。書き進めるうち、次第に考え方が変わってきて「今のデスクトップが SoC になったらめっちゃ小さくなるし、引越しもめっちゃ楽になるやん」と、むしろ好意的に捉えられるようになってきました。

小さいは正義。

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